屋敷を訪れる名目は、『明日の本除霊のための、最終確認』

 依頼人は不在なので、勝手に調べていいというありがたい状態だった。

 孝輔の車に積み込まれているのは、大仰な室内測定器というもの。

 広い範囲を調べることができる装置だと、運転している彼に教えてもらった。

 サヤは、先に車から降ろされた。

 車を端に寄せて止め、孝輔が荷物を降ろし始める。

 サヤが動くより先に、この屋敷の使用人たちが台車を押してかけよってきた。

 その手際のよさに関心する。

 今日は、サヤも一緒に裏にあるエレベータに乗った。

 再び、あの部屋に案内されると──着物の少女の幻影は、やっぱりまだそこにいた。

 意思を何も感じない幻影。

 人形のようだ。

 この部屋に入ると、他の存在のざわめきのほうが、はっきりと聞こえる。

 歌うようなもの、呟くようなもの。

 音を持たないものでも、存在そのものの気配が漂っていた。

 その中で。

 唯一、怒れるものがあった。

 古い壷だ。