「野菜もありますし、ほぐしたチキンもありますよ」

 猛烈な勢いで食べ始める直樹。

 あーとかうーとか唸りながら、ゆっくりと動き始める孝輔。

「ところで、孝輔」

 弟の方が、チキンに手を伸ばしかけた時、直樹がそれをさえぎった。

「なんだよ」

 結構太い関節の指が、空中で止まる。

「E値は発見できたかね?」

 直樹の言葉に、その指がぴくっと震える。

「きょ、今日中には見つけるさ」

 ぷるぷる。

 空中の指が、何かを抑えきれないような揺れを見せる。

「そーかそーか、そのセリフは昨日も聞いた気がするが…ほー、今日中に、ね。明日がゴーストバスター・ディだから、それまでには頼むよ」

 ニヤニヤ。

 心底、からかう笑み。

「このクサレアニキ! そう思うんならてめーでやりやがれ!」

 そして、突然始まる兄弟ゲンカ。

 だが、サヤは見てしまった。
 孝輔が取ろうとしていたチキンのフレークは、この瞬間、直樹に大量に掠め取られていたのだ。