「もう大丈夫ですか?」



僕は救急箱を置いて、急いで消毒薬とガーゼを取り出す。



「俺の方より
道合君の方を先にやってあげて?」



確かに、安藤君は顔にかすり傷1つしかなくて、谷川君の方が重症だった。

谷川君は唇が切れて、しかも額から血まで流れてしまっている。


僕は慣れない手つきで治療をする。



「…イテッ!何すんだよ!」

「すっすいません…!!」



消毒薬が傷口に染みてしまったようで、谷川君は腕を引いた。



「あのさ…涼真君。
ありがとう…。」



谷川君は恥ずかしさから安藤君の顔を見ないで言った。

谷川君の顔は少し照れていた。



「…ブッ!ハハハッ!ハハッ!
あの谷川が君付けだなんて…

似あんねぇ!!」



田中ショウ君は腹を抱えて笑った。



「うっせえな!」



谷川君は更に顔を赤くした。



「俺は、道合君のヒーローでしょ?」



安藤君がそう言うと、谷川君はコクンと小さく頷いた。


周りに倒れている人がいる、こんな中、ここだけは和やかな雰囲気が流れていた。