あの後、凜は秋にきっぱりふられた。「悪いけどあたし彼氏いるの。」といって、きっぱり。


 「凜、大丈夫…?」

 「…うん。けど俺諦めたわけじゃねーし。」


 帰り道、同じ方向のあたしたちは隣同士に並んで帰った。…きっと、今だけ恋人に見えるんだろうなあ。そう思うと自然に顔が綻んだ。


 「おい。お前、俺がふられたのがそんなに嬉しいのかよ」


 不服そうに、凜はあたしを睨んだ。今きっと世界中で一番凜に近いのは、あたしだ。



 「ねえ、凜。」

 「ん?」

 「秋はさ…彼氏なんていないから。」

 凜、大好き。あたしも、諦めないよ。

 「秋はね、先輩に好きな人がいて、それを追ってあたしらとは別のとこ行ったの。」

 あたしらはおんなじなんだね。お互い、こっちを見てない人が好きで…

 「凜はあたしとおんなじだね。」

 凜は少しだけ驚いたようにあたしを見下ろした。あたしは歩みを止めた。


 「ずっと、大好き。凜。」



 あの時の凜の顔、あたし一生忘れない。