「ふーかあっ! 卒業しても、あたしのこと忘れちゃだめだからねっ」

 「何言ってんの? 忘れるわけないじゃん、ばかだなー。」


 春と言えば、別れの季節。 あたしは今日、中学を卒業するのだ。


 「…でさ、ふーか。あんた、告白しないわけ?いくら同じ高校でも…あいつモテるよ、多分。」


 あたしには、大好きな人がいた。彼はあたしの…所謂喧嘩友達、というやつだ。


 彼はモテる。性格は取り敢えずとして、顔は良いのだ。


 だけど…いっつも悪魔とか変態とか抜かしてるから、素直になるタイミングが分からずに今まで引きずった。


 今更素直に、実は好きだったなんて…、きっと引かれちゃう、よなあ。



 「うん…、あたしは、」

 「風夏。」

 秋に、無理だよと言おうとしたら、男の低い声が遮った。


 「あ、と…何?ボタン全部無くして…モテる男は辛いよねえ。みんな見る目ないんだから。」

 あ、ほら、ばか。またそんな可愛くもない。


 声を掛けて来たのは、片思い中の喧嘩友達…落合凛だ。彼の前ではいつもこんな皮肉をこぼしてしまう。


 「…うっせーな。お前なんか告白もされなかったんだろ、卒業式なのに。」


 う。図星。


 「…凛、は、告白されたわけ?」


 第二ボタン、誰にあげたの?

 誰に告白されて、なんて返事したの?


 「…されたよ。でも、好きな奴がいるって断ったし。」


 え、それ…って、


 「俺……、秋が好きなんだ。」





 あたしの恋は終わった。