二人で並んでお弁当箱を広げると、和泉君が卵焼きを指差した。
「……あ、それ。例の卵焼きだね。一条が僕にその卵焼きを食べたことすごく自慢してきたんだ」
和泉君のお弁当は、コンビニで買ったパンと牛乳。
そういえば、いつも手作りじゃないみたいで、周りの女の子が手作り弁当何個も持ってきていたっけ。
「良かったら食べて」
「いいの?」
「うん、和泉君にも食べてほしいな。お母さんの手作りでね、すごく美味しいんだ。私の大好物なの」
「ありがとう。じゃあ、もらうね」
和泉君は卵焼きを手で掴もうとしているのを、私は咄嗟に止めた。
「あ!もしよかったら、これ、使って」
予備に持っていた割り箸を取りだした。
中学の時も、お箸を忘れちゃった友達に、よく貸していていつも持ち歩いているのが癖になっちゃってたんだよね。