「エリ、私ね。…シマと別れようと思ってるの」


この言葉を発するのに、私は相当の勇気を要した。
丸2日かかって、ようやく便秘を解消ってなもんだった。
へんな表現だけれど。


エリは、赤いチェックのお弁当包みを広げて、フォークに肉団子を突き刺したまま、
「え~~?」
と上目づかいに唸った。


ああ、やっぱり。勘のいいエリのことだ。
私に、なにかやましいところがあると気づいたに違いない。
私は、ごまかすのに必死だった。


「なんで? シマのこと、好きじゃなかったの」

「好き……のはずだったんだけど、付き合ってみたら、そんなでもなかったみたい」

「ふーーん?」


正直言って、陸上命のエリは、こんな話はあまり興味がないのだ。
あまり、と言っても、ふつうの女子ほどには、という意味だけれど。


でも、いつも一緒にいる彼女をさしおいて、いきなりシマと別れるのは、順序が違うと思った。


「私はかまわないけど。ってか、私には何も言えないし。ミクが別れるって言うんならそれで」

「うん…そだね」

「なんか、そうなるような気がしてたし」

「えっ?」

「ミク、ほんとにシマのことが好きなのかなぁって。不思議に思って見てたから」