そのうち、大地は、試合なんかどうでもいいった風情で、私に話しかけてきた。

「今日はなんだか可愛いね、ミク」

「え?」

「その髪型。試合のときは無造作にくくってるじゃん。たらしていると、女の子っぽくていいよ」

「そうかなぁ」


私は、急に恥ずかしくなった。
こんなに、ストレートに自分の外見を、男子に誉められたのは、初めてかもしれなかった。


「大地の、そのコート姿もなかなかいいよ」
と私は勇気を出して言った。

「これねぇ。こんなのがいい?俺はあんまり好きじゃないな」

「そうなの?」

「うん。俺の私服姿、カッコいいよ~」


大地は冗談ぽく笑って、私を見た。
ああ、この笑顔が、私は好き。


「もしよかったら、今度、うちの寮の近くに遊びに来ない? 山の中みたいなもんだけど。ちょうど、紅葉が綺麗だから」

「え。いいの?」

「ミク次第。でも、俺は来てほしいけど」

「うん。じゃあ、行く」


私は、ほぼ反射的に答えていた。
嬉しい!!でも、なんて、節操のない…。
ごめん。シマ。私は、心の中で、シマに謝ってばかりいる。