(なんでなのかなぁ……)


私は、退屈な授業中に、MDを聴いていた。
うちの高校は私服だ。私は、超長袖のTシャツから、MDウォークマンのコードを出して両耳をふさぎ、考え込むような仕草をして、先生の目をあざむいていた。


シマからもらったMDだ。
シマは、よく買ったCDを焼いて、私にくれる。
そして、そのほとんどが、ラブソングだった。
俺がミクを想うとき、こういう気持ちになることがある。と解説してくれることもある。


私には、それがとても心苦しかった。
シマは気づかないのだろうか? 私が、シマのことを、そんなに好きで付き合っているわけではないことを。


きみの肌 きみの唇
ぼくはきみに帰りたい。
ああ どうして
こんなにも切ない
港を見失ったぼくの船は。


曲を聴きながら、私は、まだ見知らぬ自分の恋する人のことを、想った。
シマ、ごめん。
私は、いつかあなたにお別れを言わなければならない。