「…ありがと。じゃ、また数学の時間、当てられそうになったら、席、代わってね」

「それじゃ、根本的解決になっていない。勉強しなさい」


シマは、鶏の唐揚げをむしゃむしゃ食べながら、また私から目をそらして言った。


ありがと……。優しいシマ。


彼は、その気になれば、きっとまたあの魔術を、私に見せてくれるに違いない。


シマの大きくなった背中を見ていると、胸がじんと熱くなるのを感じて、私はまばたきを何度もした。



(了)