「シマ。相変わらず、優しいね」

「どこが?! ミクのこと、見てたら、危なっかしいなって思うだけだよ」

「え?そう??どこが??」

「例えば、理数クラスなんかに来たところなんか。あんなに数学苦手だったくせに」

「えっと私、看護師になろうと思って」

「なるほどね。じゃ、俺、また勉強、みてやろうか?」

「え?」


シマは、ほんのわずか、私の視線から目をそらした。


「ねえ、シマ。坂井さんが、こっちを見てるよ」

「坂井がどうしたの?」


シマは、心底、不思議そうに私を見た。
あれ?…この表情は、嘘じゃない。


「え。シマ、坂井さんと付き合ってるじゃないの? エリから聞いたんだけど」

「えーー! なにそれ?! 坂井は、キーボードができるって言うんで、一回バンドのメンバーに誘ったことはあるけど」

「え?…じゃあ、休み時間、いつもいなかったのは?」

「知らないよっ」

シマは、私の食べかけていた鶏の唐揚げを、1つ取り上げた。