「なんか、しんどそうね。ミク」


クラブの練習のときに、エリに声をかけられた。
大地に真実を告げられてから、１ヶ月が過ぎていた。


「そりゃそうでしょ…、200ｍ走のインターバル中なんだから」

「そういう意味じゃなくて」


エリは、鋭い目で私を見ている。
彼女には、私の変化がすぐわかるのだ。


私は、エリに、大地と付き合っていたことを、言わなくてよかったと、つくづく思った。
もし言っていたら、すごい同情の目で見られただろう。


それか、「あいつ、前からああいうやつなのよ。あーもう。なんでわかんなかったの？！」と戒められるか。


そして、私は考えた。
エリに、何度も、大地のことが言えなかった理由。


私は初めから、大地の態度を、きっと不審に感じていたのだ。
どこかがおかしい、この関係は。


そして、無意識のうちに、私は大地のことを、心から信頼できる相手として見ていなかったんだと思う。