「はい。○○寮です」


学生らしき人が出た。


「あの、すいません。牧田ミクっていいますが、北小路さん、お願いします」

「大地っすね。ちょっと待っててねー」


パタパタパタと、スリッパが遠のいていく音がした。
やっぱり、大地はいるんだ。
電話に出た人は、大地と同級生だろうか。なんだか、口調がそんな感じだった。


「もしもし」


と次に聞こえた声は、さっきの人、だった。


え?


「ごめんね。大地、いまいないの」

「あ…。そうなんですか」

「はい」

「じゃあ、またにします」


電話を切ってから、とても妙な気がした。
いないって…。最初の、電話に出た人の口ぶりでは、もう絶対にいるっていう感じだった。


ひっく。
しゃっくりって、なんだか泣いているみたい。


私は、床にぺたりと座り込んで、コーラを飲んだ。
なぜ、大地は、電話に出ないんだろう。