「エリ、あのさあ……」

のど元まで、出かかった。
エリは、私の様子に気づかず、相変わらず、ケータイの写真を眺めている。


チャンスなのだ。
こんな、あえて話題もなく、時間つぶししているようなときに、そういうネタをふることは。


――でも、私は、なぜか言えなかった。
どうしても、口から言葉が出ない。


なぜだろう?
シマのときは、付き合うときも別れるときも、私は即効、エリに話していたというのに。


そのとき、エリがついと立って、言った。
「暇だし、トイレにでも行ってこよ~っと」


ああ……、言えなかった。


私は、すごく残念だった。
けれど、またそのうち機会があれば、きっと言おうと、そのとき思った。