きみの肌 きみの唇
ぼくはきみに帰りたい。
ああ どうして
こんなにも切ない
港を見失ったぼくの船は。


帰り際、大地は、私に、夢を語った。


「俺はね、船長になりたいんだ」

「船長?」

「そ。大きな船の。あの格好、カッコいいじゃん。ああいうの着て、世界中、旅したいな」

「へぇ~…」

船長の服って、カッコいいかなあ。
私は、ハイジャンパーの大地が、海の上にいるなんて、いまひとつピンと来なかった。


「陸上はどうするの?」

「あれは、高校まで。大学に入ってまでしないよ」

「そうなんだ…。もったいないね」

「そうかな? でも僕は、ほかにやりたいこともあるし」


私は、少しがっかりした。
大地が、ハイジャンプをやめるなんて。


それから、なんとなくだけれど、彼は、一つのことに執着しないタイプなんだと思った。


港を見失った船……。
彼は、そんな気分になることがあるんだろうか。


彼は、たとえ、私という港を失って、海の上で1人になったとしても、全然平気なんじゃないかという気が、私はしてならなかった。