「じゃあ、行くよ?」


私は目をつぶり、岩の方向へ向かって、まっすぐに歩いていった。
大丈夫。たぶん、間違いはない。


「ここ?」

「うん」


目を開けると、そこに、あの岩があった。
やった! 私って偉い!!


嬉しくなって、辺りを見たら、大地は、出発地点に立ったままだった。
そのときの、表情。


私は、それを見て、あれ?と思った。
大地の、私を見る目は、とても冷めていた。


第一、もしシマなら、こんなときは、歩いている私の側をついていって、岩の地点で「よし、よくやったぞ!」と喜んでくれただろう。


でも、大地は、一歩も動かずに、私が真剣に歩いているところを、ピーコートのポケットに手を入れたまま、あの冷めた目で見ていたのだ。


私は、なんだか恥ずかしくなった。
真剣にやったのが、馬鹿みたい。


私は、急いで、大地のもとへ走って戻った。