「ここはね、恋人が集まるので有名な場所」


大地が説明する。


「ほら、等間隔にカップルが並んでるでしょ。あれ、混雑してくると、鳥が並んでるみたいで面白いよ」


ほんとだ。もう、すでに鳥たちが並んでいる。
私と大地は、その鳥たちの群れに加わって、川べりのコンクリートの上に座った。


「きれいな川だね」

「うん。俺、ここも好き」

「いいなぁ。大地は。きれいな場所に住んでて」

「でも、1人で来たりしないよ。ミクがいたから、来れたの」


川の向こう岸に、ちらちらと窓からの明かりが見えた。
さらさらと、川の流れる音だけがする。


私たちは、しばらく、その音を聞いていた。
さらさら、さらさら……。
私の頭に、ラブソングが流れる。


きみがいれば
僕はなにもいらない
きみがいれば
そう 僕はきみだけを


やがて静寂を割って、大地が言った。


「ミクさあ」

「ん?」

「キスしたこと、ある?」

「うん…。1回だけ」

「俺と、キスする?」

「うん」