「ほら、こっち」


行きすがる女の人を見ていた私に、大地は、何気ない様子で肩を抱いて、私を方向転換させた。


「あっ…」

「どうしたの?」

「ううん。えっと、大地って、背が高いなーと思って」

「たりまえじゃん。そじゃなきゃ、高飛びなんかしてないよ」

「それもそっか」

「ミクの肩は、抱くのにちょうどいい高さにあるなー。ぱっと手を置いたら、ほら、こんな感じ」


大地は、再び、私の肩を抱いた。
私はドキッとしながら、ある思いに心を奪われた。


大地も、私と同じ気持ちなの…?


当たり前かもしれないけれど、大地の私への接し方は、エリのそれとはまったく異なっていた。
もしかしたら、彼も、私のことを好きでいてくれているのかもしれない。


そのとき、わたしの心は、春が訪れたように、次々と鮮やかに花が開き始めた。


駄目だ。やっぱり、こうなってしまった。
わたしは、大地に、恋をし始めている。