「ほんの少し前に…」
「ありがとうございます!」
ほんの少し前なら間に合うかも!
私は駐車場を走り回る。
「佐渡課長〜。佐渡課長、大事な書類を忘れてますよ!」
何度も何度もそう叫び続けても佐渡課長の姿はなし。
もう行っちゃったのかな…
佐渡課長が行く取引先までどれぐらいかかるんだっけ?
近いなら思いきってタクシーで行こうかな、と思っていると。
「呼んだか?」
えっ。
私は声の聞こえた方に視線を向ける。
「佐渡課長!」
そこには営業車の窓から顔を出す佐渡課長が居た。
「戸村…?」
「そうです!私は営業部戸村つぐみです」