「やあ、若者たち。
楽しんでいるかね」


不意に食堂の奥から声がして、コック姿の逆三角形体型の男がやってきた。


「七瀬さん、ご苦労様です」


八部が頭を下げた。

「うちのシェフの、七瀬 幸三(ナナセ コウゾウ)さん。

今日のスペシャルバイキングの制作者だよ」



八部がそう紹介すると、九我兄妹と五家宝が会釈をした。

ハッハッハと腹に響くほどの声で笑う七瀬幸三。

山の木こりみたいな真っ黒な髭が似合いそうだが、さすが料理人だけあって顎は輝くほどツルツルである。



「ちょうど明日の仕込みが終わったんでね」


「お疲れさまです。
今日も絶品料理でしたよ!」

「ああ、ありがとうありがとう。」



大袈裟にも握手をする二人。



「あのスイーツ全品すごく美味しかったです!幸せすぎて5キロくらい太っちゃいましたよ!」


湊も続けて握手を求めた。

なにをやっているんだこいつら、なんて目で彼方は見ている。