「なつきぃ、オマエ最近店に顔出してんだって?」

リストの紙片手に、こそりと島田先輩が聞いてきた。

「あー、ちょっと人手足りないって言われて…」

「あんまコッチに顔出さなくなったもんなぁ」


好きな人のためです、なんて恥ずかしくて言えない。
最近、仕事が詐欺だなんて情けないなと思い始めた。
そもそも犯罪なのだから。
この事を知ったら、彼女はなんて思うのだろう。
職業はホストなんだと勘違いしてる間に、この仕事から足を洗いたい。
そう思うようになっていた。
というか、ホストも辞めてまともな仕事に就きたい。

「俺もさぁ、そろそろ厭きてきたから辞めたいんだよね」

先輩らしい発言に思わず笑みが溢れた。

「そーゆう人でしたよね、先輩は。誘っておいてソレっすか」

「あ?何笑ってんだよー、心外だなぁ」

昔は、こんな馴れ合いで十分だった。
今さえ楽しければ。
でも、自分だけ楽しければ良いわけではなくなって。

彼女にも、莉子ちゃんにも笑っていて欲しいから。

だから、俺自身しっかりしたい。