彼女こと、莉子ちゃんと出会ってから一週間以上が過ぎた。

あの日、お茶にでも誘いたかったが、お金を受け取ってすぐに別れてしまった。
話している内にボロが出てしまっては元も子もない。
どうせ叶わない恋なら、もう少しだけ夢を見させて欲しいなんて、我が儘だろうか。


ブー、ブー。


携帯にメールが届いて確認すれば、表示された名前は莉子ちゃんからで。
慌てて中身を確認する。


無題
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こんにちは。
お兄ちゃんの携帯が繋がらないんですけど、何か知ってますか?

良かったら、また会って聞かせて下さい。

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「あ、忘れてた」

「何が?」

「いや、こっちの話っす」

テーブルの向かいでハンバーガーにカブりつきながら、島田先輩が尋ねてくる。
先輩とはすっかりコンビを組まされていた。
再び手元に目を戻し、自宅にある電源を切ったままの携帯電話を思い出す。
仕事用に渡された一台で、以前”お兄ちゃん”として使った携帯だった。
あれ以来、何となく使えずに今に至る。

「そういやさぁ、前に十万受け渡ししたやつあったじゃん?アイツからまた取れねぇの?」

「あー…もう無理っぽいですね」

「なんだよー、良いカモだと思ったんだけどなぁ」

すいません、と頭を下げた。
さすがに女子高生から貰いました、とは言えない。
しかも好きになりましたとか、どこの少女漫画だと思う。
状況が状況なだけに、不毛だと分かってはいるが。

「すんません、俺ちょっと急用が」

「お?おー、またな」

トレイを片付けて、足早に店を出る。
そして携帯を取り出すと、画面に写ったメールに返信をした。


Re:
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今日会えないかな?

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唐突だとは分かっていたが、彼女に会いたくなった。
ただ、それだけ。


ブー。


すぐにメールは返ってきて、学校が終わったら会ってくれるらしい。


ヤバい、かなり嬉しい。


また彼女に会える。


顔が綻ぶのを抑え、ひとまず視界に入った銀行へと足を向けた。