道彦は一度、深呼吸をしてから、智子を見据える。

「海を行くなら水に漬かる屍ともなろう。山を行くなら草の生える屍ともなろう。天皇のおそばにこの命を投げ出して悔いはない。決して振り返る事はない……この歌は、壮行会で歌われた」

 静かに道彦が言った。

「壮行会で……?」

 あずみは、やっと理解したように瞳を曇らせる。