「山行かば、草生(くさむ)す屍……」

「辞めてください!」

 智子は、振り向く事なく、固く目を閉じて叫んだ。

 その歌が何なのか、見当もつかないあずみだけが、智子の様子に驚きを隠せない。

「どういう歌ですか?」

 あずみは眉根を寄せ、道彦に尋ねた。