「海行かば、水漬(みづ)く屍(かばね)」

 静かな歌が耳に届き、あずみが振り向く。

 そこには、道彦が真剣な面持ちで立ち尽くし、ゆったりとした重苦しい歌を口ずさんでいた。

「道彦さん……」