智子はようやく、あずみに視線を移した。

「今は、そんな時代なのよ……行かなかったら非国民と罵られるんだもの。どの道、簡単には生きていけない……でも」

 智子の重い言葉に、あずみは声すらも出せなかった。

「でも、非国民でもいいから、大成さんには戦争に行ってほしくなかった」

 戦争の事はあずみも授業で習った事があった。

 しかし、あずみの将来の夢は、定まりこそしていなかったが、過去を振り返るものではなかった。

 いつも未来を担う職業に付けたら、と思っていたのだ。