「弟……」 「ええ、でも」 智子は土の付いた手先を払いながら立ち上がると、青く澄んだ空を、遠く思い馳せるように見上げた。 「学生は戦争に行かなくても良かったのに、つい二年前には誰もかれも軍に入隊させられたの。自分の意思関係なく……」 同じくあずみも立ち上がり、智子の寂しい横顔を見つめる。