(僕は君に会いたいな)
裕貴は窓から大きな桜の木を見る。
(なぜだろう?)
「裕貴、寒くない?」
「うん…」
「大丈夫よ大丈夫だからね」
裕貴の母、幸代は自らに言い聞かせるように裕貴の手を強く握る。
「母さん…」
「なあに?」
幸代は無理に笑顔をつくる。
「僕は大丈夫だよ」
「そう?何かあったら呼びなさい」
幸代は部屋から出て行く。裕貴は、引っ越して急に倒れた。医者からは原因が分からない。そうはっきりと言われた。
(僕は死ぬのかな…嫌だな…)
「可哀想」
桜の太い枝に4歳の女の子が座っている。桜吹雪に揺れる黒い着物が神秘さを醸し出している。
(綺麗…)
「君は死に神??」
「さぁ…」
女の子は微笑みながら僕を見つめる。
「君は誰?」
「さぁ…?」
裕貴は、話す言葉が見つからない。
「また会える?」
「さぁ?」
月夜は桜吹雪と共に消える。