「配線なんて、そうそう大幅に動かせるもんじゃないんだよ」

 泉は、口の端を吊り上げてつぶやく──場所や環境によって、動かせる範囲などは決まってくる。

 24時間体勢での監視にも穴がある。

 宝石の奪還までは出来なくとも、配線を破壊する装置くらいは設置可能だった。

「さすがに全部のカメラって訳にはいかなかったけどな」

<次に進む>

 ヘッドッセットからの声に、手にあるボタンを確認する。

「了解」

 ボタンを押してベストのポケットに仕舞った。

「さてと、こっちは攪乱(かくらん)」

 笑みを含んで発し、目の前に立ちはだかる男たちに駆け出した──