――シュンサイド――


『あっ…』


マヒロが出て行ってすぐ。

メイリーが思いだしたような声を上げた。


『言い損ねちゃったわ…』


『なにを?』


『うん…まあいいわ。直に分かるしね』


そう言ってから、メイリーはため息をついた。


『最初聞いたときは、もうどうしようかってくらい嬉しかったのに…』


『……』


なにがと言わなくたっても分かる。

言わずもがな、楓のことだ。


そりゃあ確かに、ついさっきまでは、誰もが半信半疑ながらも期待に胸を躍らせ、泣きそうなくらいに嬉しかっただろう。

ただ…それを確認した瞬間の安堵と、同時に目の当たりにした現実。

それに戸惑い、ショックを受けていた。



『ところでマヒロは大丈夫なんですか? 顔色もまだ悪かったけど…』


「全然大丈夫じゃないけど…」


『止めてその場合!?Σ』


「止めたって無駄さ。どんな状態でも、彼は生きているんだ。そばにいたいだろうからね…」


……それはそうだ。

真裕がどれほど楓を愛しているか。

どれほど会いたがっていたことか。


例え眠ったままでも、どんなに嬉しいことか…。

それでも、眠っているだけというのがどんなにつらいことか…。


その挟み撃ちで、どんなに苦しいことか…。