『マ、マヒロ…』


「ごめんちょっとどいて」


おろおろするハディの横をスッと通り抜け、まだくらくらする頭を抱えながらカラリと病室の戸を開けた。


「こらこら。どこに行くのかね」


どうでもよさそうにも聞こえる父様の制止も無視し、向かいの病室を開けた。


『なんだカエデのとこ…』


安心したようなメイリーの呟きを耳に、中に入った。



「……」


…するとすぐに目に入るのが、横たわる彼…。

しんとなって薄暗い部屋に、心電図の音と光だけがただ機械的に鳴り光続ける。


「かっくん……」


恐る恐る歩み寄った。


「……」


ガタガタと椅子を近づけて座り、そうっとかっくんの手に触れる。


「あったかい…」


…こんなにあったかい…。

心臓、動いてる。

息……してる…。


生きてる―…。


「…っうう…っ…」


それでも……それでも生きてる…!

生きてて…くれた…!


「っうえー…んっ…!」


止まらない涙を拭うこともなく、ずっと欲しかったその温もりを握りしめた。