むっと唇を尖らせながら言うと、少し顔をしかめたものの。
「車でなら…」
と、しぶしぶ許可してくれた。
これ、行き先があくまで病院だからだよねきっと。
「それではお車お出ししましょうか?」
「うん、お願い」
「はい。では少々お待ちを」
野木さんはそう言うと、一歩下がって腰を折り…踵を返していった。
うん。
いつもながら、無駄なほどに礼儀正しい。
「礼儀正しさに無駄はねぇんだよ」
「……」
ただの例えじゃん?
溢れるほど礼儀正しいってことだよ?
それ、人に分けて回って? ってくらいってことだよ?
それをさ?
ぴしゃんと斬り捨てることなくね?
「そら降りるぞ」
「むう」
「いや、おい。そいつ連れて行く気か?」
「ん?」
「わふっ」
…………。
おお。
そういや、紅葉を抱っこしてました。
「こん中で待っててね。ごめんね? あ、でもお兄ちゃん達いるから怖くないよ」
よしよし頭を撫でながら、紅葉を琥珀達のもとへ返した。