――真裕サイド――
なぜだかかっくんが突然話し出したのは、自分とバイオリンの馴れ初め話。
今そんなことは聞いてないのだけど、興味はあった。
「そりゃ親父達がお前のファンでさせたがったのが最初だ。でも才能のあった俺は、親の満足には収まらなかった」
「……自分で才能あるって言っちゃうって相当だよね」
まあ相当なんだからいいけどさ…。
「日本で活動していただけだったが、あるコンクールに出るためにパリへ行ったんだよ」
パリ。
あたしの実家。
「そこでお前に会った」
「…………え」
会った? …うそぉ!!
「元々知ってはいたが…その実力を本当に思い知った。天才という言葉は、俺に使われるべきじゃない。こいつにこそ相応しいと思った」
「……」
「…俺はそのときから…お前の…笑顔に惚れてたん…だよ」
「…!」
言いかけて顔をそらし、残りを絞り出すように告げたかっくん。
照れ屋な彼らしかった。
「……だからつまり、会いたくて…ただそれだけで……やってた…それだけだ」
「…あたしに?」
「…ん」
「あたしのこと、好きだったの?」
「…うるせぇな」