「おい真裕…」


「もういいもん。あなた家に帰れば? あたしもパリに戻るから」


「こらこら…落ち着けって」


えらく本気だな…ったく。

仕方のねぇやつ…。


「わーったわーった。ったく…言やいいんだろうが」


「もういいって言ってるでしょ」


…マジだな本当に。


本気で聞く気のない様子の真裕の背中を見て、ものすごく嫌だったけど、重い口を開いた。


「……好きだからだよ」


「…………?」


真裕の足が止まった。

突拍子もない一言を怪訝に思っている表情で振り返る。


「お前を。お前だけを、ずっと愛してるからだよ」


「……!」


ああ……ったく。

なんでこの俺が、ここまでこっ恥ずかしいことを道のど真ん中でしなきゃならねえ?


不満に思いながらも、もはややけくそ。


「俺がバイオリンやってたの……なんでだと思う」


…俺にしては珍しく、少し饒舌になった。


「…そんなの…」


「関係大アリ」


「……」


それから真裕は、数歩こちらに戻ってきて、不思議そうな顔で俺を見つめた。