――楓サイド――


「…?」


思わず漏らしたため息に、真裕が不思議そうな顔で見上げる。


「どっちかっていうとため息つきたいのこっちなんですが」


「なんですがじゃねぇよ。大体お前、いつも感情表現が分かりにくいんだよ…」


最初の頃だって、べったり俺に引っ付いていたり好きだのなんだのぬかしたり…。

そのくせ恋愛というものを知らないから、そういう感情だと思わない。てか思えない。

おかげで俺がどれだけ苦労したか…。

体調が悪い時も、テンションがいつもと同じだからな。

本人は上がってるつもりらしいが、他から見ればいつもそんなテンションだこいつは。


「…あのな」


「なに」


「お前さ、知ってどうするわけ?」


「なにを」


「……あれだ。…退学の…理由?」


「ほら口ごもった。やましいことがあるんじゃない」


「やましくはねぇよもう」


「もう?」


「……」


くそ…こいつ何気に鋭くなりやがって畜生…。


「そうやって隠すからじゃない! 大体普通の学校と違って、宝院をやめることは大ごとなんだもん、気にするわ! もういい!」


「あ、こら待て…!」


怒鳴るだけ怒鳴ると、真裕は早足で歩きだした。

一応子どもを案じているらしいが…。