ぷーいっと見て見ぬふりをし、顔を逸らした。


「しかしまあ、ああなることは分かっていただろうに……なんでまた急にやめたんだろうな?」


「さあ…私が退学を申し出たら、『あ、俺も』…みたいなノリで」


「…なんで結婚したの?」


「…うちの父とお義父さま方がさせたんです」


「……そおだったね」


…うん。まあね。


「こらどこ行くの! ちゃんと説明しなさいこのバカ!」


「だから…日本を出るからだっつって…」


「あんた今ウィーンに留学中でしょうが。ちょうどいいでしょうが」


「……」


あ。

今それもそうだって思った。

考えなしに言ったなあれ。


「…オイコラ真裕」


「知らね」


「……」


…………ああもう。しょうがないな。

いいわ。

あとで絶対に聞き出してやるんだから。


「お義母さま、あたし達そろそろ失礼してもいいですか?」


「ん? あら、まおちゃんもう行っちゃうの?」


助けを求めてきたかっくんにため息をついて、仕方なぁく手を差しのべてやった。

あたしって優しい妻。


「はい。これからウィーンに戻らなきゃならないから」