そのちょうどみんなが注目していた病室の扉が開き、何とも言えない表情の真裕が顔を出したからだ。


「ま……」


「りんりん、蓮くん❤……あ、しゅっちゃんも」


「俺ついで!?Σ」


「わーんっ! りんりん会いたかったあ!」


「いや、さらに無視…? 俺ってそんなもん…?」


ショックを受ける修平の横を通り抜け、涙目で花梨に抱きつく真裕。

やっぱり、真裕には花梨だな…。


「まお~っ」


「うえ~んりんりん…! いっぱいいっぱい言いたいことあるんだよぅ~!」


「まお…つらかったね。ごめんねまお」


…久しぶりに、真裕がこんなに泣いているのを見た気がする。

いつもいつも、声を殺して…いや、声も出ずに、光を失った瞳からただ涙をこぼしていただけだったのに。

今はまさに、“泣いている”という感じがした。


こう見ると、やっぱり真裕は警戒心が強いのかもしれない。

なんだかんだで、こいつらや楓以外にはあまり心を開いてないように思う。

俺達では、いざとなったとき絶対的に心を閉ざしてしまう。

まあひょっとすると、それはこいつらも同じで……開けるのは、楓だけなのかもしれないが…。



「あ…ねえまお、楓…」


「…!」


少し落ち着きを取り戻した真裕に、花梨は思いだしたように言った。

しかし楓の名を聞いた瞬間。

真裕は、びくんと肩を揺らして黙り込んだ。


「…まお…?」