狐が氷狼に飛び掛かり、振り回されながらも鋼の牙を氷狼の喉に食い込ませた。

どうと音を立てて倒れた氷狼の体からは一滴の血も出ていない。


――獣の姿をしているが生き物ではない


そういう事か


ピクリとも動かなくなった氷狼

だけど、あたしの獲物ではない

がんばらなきゃ


「松明を持ってたんじゃ、氷狼を捕まえられない」


「火を消して捕まえる方に専念するか?」


チェイサーはダメだとは言わなかった。

多分イタチや狐もダメだとは言わないだろう。


でも、あたしはそれでいいの?

自分のためだけにせっかく上手くいっている狩りの手順を壊せる?


「ううん。あたしのは後でもいいや」


チェイサーは一瞬黙ってから

「好きなようにしていいのだぞ」

と言った。

「誰も責めたリはしない」


「分かってる。でも、あたしが嫌なんだ」