「やかましくて悪かったねっ!」


あたしが怒って言うと、チェイサーは笑った。


「それだけやかましければ炎がなくても氷狼を退けられたやもな」


んな訳ないでしょ


でも今、明らかに氷狼はあたし達から離れている。


「もう何本か松明を持ったら?」


「松明を作ることはできても俺達は火を点けたり持ったりすることはできない。火を操れるのは人の子だけだ――そのままその火をしっかりと持っていろ、チビ」

チェイサーはそう言うと手綱を持ち直した。

「追い立てるぞ! 右と左から囲い込め。横に逃がすな!」


イタチと狐が二手に別れた。


チェイサーは馬をジグザグに走らせながら、まるで羊の群れを追い立てるように氷狼達を一カ所に追い詰めていく。


あたしは手に松明を握りしめ、左右に動く馬から転げ落ちないように、片手をチェイサーの体に回してしっかりつかまっていた。


体はすぐ側にあるのに何の温もりも感じられない。


やっぱりチェイサーは人間じゃないんだ。


かつて人間だったとしても