馬鹿みたいなやり取りに飽きたのか、瑛太は庭に置かれたベンチの一つに座った。


それに倣ってあたしも瑛太の隣に少し距離を置いて座った。


そのことに瑛太は何も言わなかった。気にしてるのはあたしだけ。


昔は、一つのウォークマンのイヤホンを片方ずつはめて音楽を聴いたりしたけれど。


自分の気持ちに気付いてからは、そんな距離さえ恥ずかしく感じるようになった。


今はきっと、瑛太と指がぶつかっただけでもあたしは赤面してしまうだろう。


「てゆーか、よく俺がさっきの予行練習サボったのわかったね。俺たちクラス離れてるのに」


思い出したように尋ねてきた瑛太の言葉に、思わずあたしは返事に詰まった。


瑛太に会いたくて、瑛太の姿を探してたから。目が勝手に瑛太の姿を追うから。


なんて、そんなこと言えない。


きっと、口に出したところで瑛太は何も気にしないと思うのに、過剰に反応してしまうあたしはどうかしてる。