「聞いていただけて、助かりました」

珈琲の代金を置いて、
目の前の人は立ち上がった。


席を立ち、歩き出そうとして、
しかし一度止まり、こちらを振り返った。


「そうそう、私もうすぐ結婚するんです。
彼女を死なせない為にも、
呪いを、どうしても解きたかったんです。

……解っていただけますか?」


申し訳なさそうに微笑む相手に、僕も笑って返した。

笑うしかないじゃないか、こんな状況。

それから僕は、祝辞を述べた。


「……おめでとうございます」

「ありがとうございます」


そう返して、
彼は喫茶店から出ていった。