「ねえ」


その時


囁くような小さな声も右耳が聞き取った。

空耳?


その角度のまま


眼だけ横に泳がせる。


「そや、君や」


その声は右隣の男子のものだった。


細長いベースの輪郭にきりっとした眉毛と

反対に細長い目を円状にカーブさせ


薄い唇は緩く上に上がっている。


誰…?


クラスの男子とあまり話もした事はないし

顔も薄っすらとしか覚えていない。



頭の中にクラスメートの名前だけ回想するが


当てはまらない。


おまけにこの大阪弁も。


こんな人いたっけ??


「君、ホームルームおらへんかったやろ?俺、今日から転校て来た秋月柊太や。よろしく」