この景色はあの時に見た景色と同じ。



この打ち寄せる波の音も、潮の香りも変わらない。



変わったのは、ただひとつだけなんだ。



「夜に聞くと、波の音ってなんだか怖いね」



イサムに伝えるなら、今しかない。



変わってしまった気持ちは戻らない。



「そっかな?僕はわりと好きだな……。いつ聞いても、なんだか落ち着くよ…」



緊張でぎこちない笑顔の私に、



きっと、イサムも少し気づいている。



「あのね、イサム……私ね……」



やっとのことで絞り出した私の声は、小さく震えていた。