「え、うん。


でも片付けなきゃ」


「…お人好し?」


「ただ優しいって言ってくれる?」


そして散らばった紙やテープを拾い集めていると


なぜだか沈黙が訪れた。


そして藤原さんの手が止まっていることに気がついたそのとき、


なにか冷たいものが


俺の手に一瞬触れた


「あ、いや」


この冷たさは嫌でも覚えてる


彼女の指の、体温。


あからさまに戸惑ったような声を出した藤原さんの顔は


暗くてよく見えない


「今、」


「ううん、なんでもないっ!!」


「ちょっと待てって、なに?」


「ちょっ、…離して」


思わず逃げようとした藤原さんに手を伸ばすと


また腕を掴んでいた


「なんでいっつも、腕、掴むの」



「今、手、握ろうとした?」



「な、何言ってんの?
そんなわけ…」


「じゃ、なんで」


つい強く腕を掴む


するとあきらめたように、一度立ち上がった藤原さんは


またしゃがみこんで


俺と同じ視線の場所に
いるんだと、知った