ドキドキと高鳴る鼓動のまま、あたしはゆっくりと先輩と向き合うように右を向いた。
「先輩」
「ん?」
先輩の眠そうな声に申し訳ないと思いながらも、これだけは思った今伝えたかったから口にした。
「あたしを演劇部に誘ってくれてありがとうございました」
感謝してもしきれない。
しつこくあたしを誘ってくれた先輩のおかげで今のあたしがここにある。
面倒な男だと思っていたけれど、今となってはそれがすごく有難い。
「いえいえー」
先輩はあたしを見つめたまま笑った。
これ以上睡眠の邪魔はできないから、
「おやすみなさい」
そう伝えると、
「おやすみ」
と、声が返ってくる。
それがくすぐったくて嬉しかった。