俺の、鼻で笑う気を失せさせた華恋が、小さく肩を上下させて笑った。


「なーんて言う子、かなり痛いよね」


「お前も十分痛いだろ」


「自分が可愛いとか思わないし。鏡すら見たくない」


「...そこまで言うなよ」


...可愛いんじゃん、お前。


かっこいいことは言えなかったけど、たとえ話


だったということにほっとする。


「話逸れちゃったから戻るけど...」


華恋は、振り向いて俺を見た。


こっちむいてくれたことに嬉しく思って、華恋の声を待つ。


「友達の言う"華恋の彼氏"に当てはまる人、


お兄......なのかなって」


体を机に回り込ませ、俺の隣りに愛おしい温もりが与えられた。


ほんのりとする、甘い香り。


同じ家に住んでるのに、お互いの持ってる匂いが違うのは


俺が男で、華恋が女だからだ。


「間違っても、友達に彼氏がお兄ちゃんだとは言わないよ?」


「あぁ」


マジ間違ったらどうするんだよ。


相手は華恋だ。


うっかり口を滑らす、ということは


よっぽどのことがない限りしないはず。


...と、信じる。