ただの逃げだ。


責任のない自分の思いから逃げるためだけに、唇を重ねた。


「...してやったろ?」


「してくれたね」


華恋は満足そうに、でも不満足そうに、俺の足の上からどいてくれた。


「うあぁぁー...さっきびっくりしたよね、お母さん」


ベッドの上に、足を伸ばして座る俺の隣りに、華恋が寝転んだ。


キスくらい...もっとしたかった。


「な。そういえば昨日さ、あのまま寝ちゃったんだよな?」


「とんでもないことしたよね」








母さんが、俺の部屋を覗かなかったからよかった。


だから夕飯の時、いくらでも上手くごまかすことができた。


また同じようなことがあって、次には母さんが夜中にでも、俺たちの最中にでも、部屋を覗くかもしれない。


兄妹で続けていく行為。


それには、危険が伴う。