思い出した?何を?


何を言い出そうとするのかわからなくて、今度は母さんじゃなくて、華恋に焦りを覚える。


「昨日ね、遅くまで勉強教えてもらってたの。私、半分寝ちゃってたんだけどね。...うん」


最後の"うん"は、完全なる華恋の独り事。


「そうだったの?ずいぶん仲良くなったのねぇ」


最近華恋に勉強を教えてはいない。


"あの日"からは一度も教えていない。


お互いのための華恋の嘘。


「たまに、お兄に勉強教えてもらってるの」


2人の関係を壊さない為に、華恋は母さんに嘘をつく。


俺は、2人の会話に、口を挟むことなく、無言でたくさんのことを思う。


母さんの言う夜中は何時かわかんないけど、普通の日は日付が変わる前後の時間に華恋を部屋に戻す。


けど、昨日は...


日付が変わって何時間が経っても、華恋を部屋に戻してなかった。


朝方になっても、華恋といた。


「ね、お兄ちゃんっ」


「おう」