近づくにつれて二人の会話がだんだんと聞こえるようになってきた。

何やら言い合っているようだ。



「あんたなんか最低よ!!!」



パシッ



その瞬間はまさに家の門に入りかけた時だった。



そのまま女性は走って行ってしまった。

これは……

マズイんじゃないか……


この状況は笑ってごまかせる雰囲気じゃないし、まして秋人に声をかける自信もない。

とりあえず、何も見なかったことにして、


ガタッ
肘が門にぶつかりそのままバランスが崩れ、缶コーヒーは見事に地面へと転がり落ちた。

ゴトゴトゴト……


「お前、何やってんだよ。しかも今、無視しようとしてただろ」

「え、え──と」

ダメだ、何も言葉が見つからない。

「しかも缶コーヒーこんなに買いこんでさ、お前ブラック飲めないじゃないだっけ?」

「これは……」

春兄に失恋してやけ食いならぬやけ飲みをするために買ったとは言えない。

「春兄にフラれてその腹いせだったりして」



「……」



「もしかして図星……?」




パンッ




「秋人なんか大嫌いっ!!!」



バタバタ……バタン!!



「お、おいっ!!夏木〜っ!!……どうするんだよ、この缶コーヒー」


秋人は地面に散らばったコーヒーを見つめていた。