駅の改札の前で、正人を待っているだろう真里を見つけた。
あの白い肌も綺麗な横顔も。
あたしには生まれもってないものだ。

その向こうから、正人が人ごみを分けて改札に向かって来るのが見えた。

正人はあたしが作りものだと知ったら、どうするだろう。
正人はあたしが真里と一緒に働いていると知ったら、どうするだろう。


いつか正人が言った。

『美那さんはすごく綺麗だ。全部。』

その言葉だけが頭に響く。

きっと正人は何も知らない。
こんな風に思っているあたしの事も。
正人が好きだといったあたしの冷たくて細い手、足、胸全部が偽物で。

こんな風に、真里を死ぬほど羨ましいと感じてるあたしの事も。




向こうから並んで歩いてくる2人に、美那は一歩ずつ近づいていく。

駅の雑踏の中、聞こえてくるのは自分の心臓の音だけだ。


ただ、あたしには正人はまだ必要なのだから。


end.....